ミュージカル『My Fair Lady』の挿入曲。『君住む街角』という邦題でもよく知られています。原作はジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』。ロンドンの下町、夜の街で花を売っていた少女イライザ。そこへたまたま通りかかったヘンリー・ヒギンズは、彼女の余りにもひどい訛りを聞き、正しい発声と淑女としての行儀を身に付けさせると断言する…

この曲は第一幕の最後で競馬場で見かけたイライザを追いかけてきた貧乏貴族のフレディがヒギンズの家の前で彼女に会えるまで待つ場面で歌われます。初演のトライアウト(試験公演)の後、第一幕が冗長なので短くすることになり、作曲したロウは自分で書いたこの曲があまり気に入っていなかった上、客の反応もよくなかったのでカットすることにしました。しかし作詞したラーナーはこの曲のメロディも、自分の書いた歌詞もとても気に入っていたので、ヴァース(前歌)の歌詞を書きかえてわかりやすくし、ロウもそれにあわせてメロディを書きかえると、次の日からは客の評判もよくなってカットされずにすんだのだそうです。Frameworkはデヴィッド・ライトのアレンジのものを歌っていますが、ヴァースの歌詞は映画版とは異なっています。

'64にはオードリー・ヘプバーン主演で映画化されました。舞台版ではジュリー・アンドリュースが主役でしたが当時は無名だったため、必ずヒットする主役をということでオードリーが抜擢されたそうです。この年のアカデミー賞ではオードリーは歌が吹き替えだったためノミネートさえされず、もともとの主役であったジュリー・アンドリュースが同じ年に公開された『メリー・ポピンズ』で主演女優賞を受賞して溜飲を下げたということです。ちなみに映画『My Fair Lady』の編曲担当はアンドレ・プレヴィン(現N響主席客演指揮者)で、アカデミー編曲賞を受賞しています。

On The Street Where You Live

Verse
Darling, there's the tree you run to
When it starts to rain.
See the way it's filled with bloom, such fragrant bloom.
And isn't there a garland all around the window pane?
That could only be your room!
This street is like a garden and your door a garden gate,
What a lovely place to wait!

Chorus
I have often walked down this street before
But the pavement always stayed beneath my feet before.
All at once am I several storeys high,
Knowing I'm on the street where you live.

Are there lilac trees in the heart of town?
Can you hear a lark in any other part of town?
Does enchantment pour out of every door?
No, it's just on the street where you live.

And oh, the towering feeling,
Just to know somehow you are near!
All that overpowering feeling
That any second you may suddenly appear!

People stop and stare, they don't bother me.
For there's nowhere else on earth that I would rather be.
Let the time go by,
I won't care if I
Can be here on the street where you live.


君住む街角

ヴァース
雨が降り始めると君が駆け込む
大きな木があそこにあるね
あんなに花が咲き乱れていて
それに窓ガラスのまわりには花束がいっぱいだ
あれがきっと君の部屋だね
この通りは庭。そして君の家のドアは庭の入り口さ
君を待つにはなんて素晴らしい場所だろう!

コーラス
この通りは、まえに何度も歩いたことがある
いつも敷石をしっかり踏みしめていたのに
突然、僕は天にも昇るような気持ちになった
ここが、君の住んでいる通りだと知ったから

ライラックの木は街の真ん中にあるかい?
街のほかの場所でヒバリのさえずりが聞こえるかい?
どの家のドアからも喜びがあふれているかい?
いいや、それは君の住んでいるこの通りだけさ

ああ、君が近くにいると思うだけで胸が高鳴る
ふいに君が現れるような気がして心が強くときめく

道行く人は足を止めて僕を見ていくけれどへっちゃらさ
だって世界中のどこよりも僕はここにいたいから
時間なんて気にならない
君の住むこの通りにいつまでもずっとこうしていたいのさ

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